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雨の西沢渓谷

旧森林軌道


不動の滝で、滝の続く渓流沿いの道が終わった。山の斜面に設けられた階段を上り、「旧森林軌道」と呼ばれる道へと向かった。渓谷入り口に続く帰り道でもある。

1933年から68年までこの道にはトロッコが通い、付近一帯から切り出した木材を、中央線の塩山(えんざん)駅まで運んでいたそうだ。今でも線路が残っていて、所どころ、地面から顔を出している。

ブレーキひとつでトロッコを操る危険な仕事に悲劇はつきものだったようで、「作業員のだれそれが谷底に転落して大ケガをした」といった話が案内板に書かれていた。彦一さんが転落した場所は「ひこいっちゃんころばし」、猪虎狸(いこり)さんが転落した場所は「いこりころばし」というふうに、事故現場には名前までついている。

旧森林軌道は線路が敷かれていただけあって平坦で、道幅も広く、歩きやすい。帰り道が緩い下り坂なのは何よりうれしかった。山肌に大きな切れ込みがある所には、鉄製の頑丈な橋が架けられるなど、安全に歩けるよう整備されている。ただ、崖側には柵がなく、のぞき込むのも恐ろしい「ひえぇ」な急斜面なので、いくら歩きやすいといっても、決してよそ見はできなかった。

それまで歩いてきた渓流沿いの道と異なり、旧森林軌道は沢から高い位置にある。水音がまったくといっていいほど聞こえないのは、少し寂しかった。

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平坦な道が続く旧森林軌道
広葉樹が頭上を覆う、平坦な道が続く。

旧森林軌道の43号橋
頑丈な橋がいくつも架けられている。この橋は43号橋。渓谷の入り口に向かうに従い、番号が小さくなる。

急な斜面
橋の手すりの間から斜面を見下ろす。ひえぇ。

トロッコの線路
トロッコの線路。雨降りの一日だったが、お昼過ぎのわずかな時間、お日さまがのぞいた。

復元されたトロッコ
復元されたトロッコ。木材の切断面に留め金具が打たれ、木材同士をしっかり結束させた上で運んだ様子がよくわかる。

鶏冠山(とさかやま)
旧森林軌道に入って30分ほど歩くと、大展望台に出た。雲の切れ間から、2,115mの鶏冠山(とさかやま)の頂が見えた。鶏冠山の東隣(写真では右手)には、さらに高い2,468mの木賊山(とくさやま)があるらしいが、すぐに雲が下りてきて鶏冠山も隠れてしまった。

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